かみ合わない日常(永遠に暫定)

やってくるこの毎日が、人生だと知っていたら!

夏少女06

ああ・・・暑い暑い・・・今年の夏は、なんて暑いんだ。夕方の六時を過ぎたというのに、まだ、日は沈まない。

その日ボクは残業割当で、最上階の轟音の中で仕事をしていた。
(暑い夏・・・そういえば、暫く雨ばかり降っているな)
こうして地上を望む風景は、物事の欠点から目をそらせ、現実を厭と言うほどボクの頭に、心に叩きつけてくる。

どういうわけだか、ここ二、三年、世の中がつまらなくてしょうがない。
会社にしても、家庭にしても、私の今の生活は決して他人から見て哀れみを感じさせるものではない。
昨年転職した会社での仕事にも慣れ、自由な時間はあまりないので、
自分自身に意味を問わなくても済む・・・いいではないか。いいことではないか。
しかし、これが却って災いし、排他的な思いばかりを追いかけているのだ。
せめて、楽しめる何か良い趣味でもあったらと思うのだが…

少し、詰所で休もう・・・そう思った僕は、詰所へと降りる階段へと足を向けた。
その時。
「ワッ!!」
突然、小さな声と共に、背中を軽く両手で叩かれた。
ボクは、ちょっと驚き後ろを振り向いた。
そこには、両手を後ろに回してカバンを持ち、いたずらっぽく笑う少女の姿があった。
彼女は、少し丈の短い制服のスカートに、素肌にブラウスを纏っていた。綺麗に二つに分けられた髪が愛らしい。

少女は、はにかんだ笑顔を浮かべながら
「ねえ・・・お話しよう」そう云った。
ボクは微笑んでコンクリートのフェンスに肘を乗せ、壁に寄りかかって少女が何を言い出すか待った。
「ねえ・・・おじさん。内緒話、聞かせて」
「え!!」
ボクは、呆気に取られてしまった。突然話し掛けたきた少女に、一体何を話せばいいのだろうか。

というか、ここは職場だろう?どうして少女なんかが存在するんだ。
ボクの問いかけに答えるよりも早く、ピクンと痙攣した体躯は漆黒の闇へと吸い込まれていく。
覚めない夢への入口に。

(と)