かみ合わない日常(永遠に暫定)

やってくるこの毎日が、人生だと知っていたら!

晩夏の挽歌

台風が駆け抜け、雲の切れ間から輝く西の空
空気は澄み渡り、湿った風が頬を叩く
午後5時の陽光は、僕を高いところへと誘う
車で15分もあればたどり着く高台は、昔の面影もなくモダンに整備され
銀色に鈍く輝く展望台へと、吸い込まれて

東へと真っ直ぐに伸びる道
大きなクレーンがひしめく埠頭、ランドマークだったあの建物は、もうない
視点をゆっくりと右へと向ければ、工場は煙を吐き出すことをやめ、
西の空にあった黒い雲がどんどんと流れ込む

気怠さを引きずりつつ、展望台を降り、木立を眺め
色づき始めたナナカマドの実に、夏は侵食されていく
日は落ちる、風は冷たい

(と)