かみ合わない日常(永遠に暫定)

やってくるこの毎日が、人生だと知っていたら!

いつか読んだような妄想

うんざりするようなゴミのような光景に唾棄しつつ。
改札前の通路に座り込んでいる、薄汚れた似非浜崎に。
もはやボクは、誰とも話したくないのだ。会話を強要される社会なんて、ゴメンだ。
そうやって自分から他者に対して壁を作ることにより、自己の保身を図る。
まるで、自分は他者よりも勝れた人間であるような錯覚に陥りながら。

日々の通勤、無数の労働者の一人として雑踏にもまれているわけであるが、斯様に多くの人々が連日労働に勤しんでいるというのに。
存外に思春期のニヒリズムはそれなりに耽美ではあるが、三十路を超えれば薄汚いだけである。
少しずつ築き上げた小さな城を、後はただ崩れていくだけの、守るべきはちっぽけな自尊心だろうか。

コンビニに立ち寄り、発泡酒を2本買う。ビールを買う金はない。つまみは・・・冷蔵庫に入っていた、竹輪でいいか。
店を出ると、駐車場の前で蹲る少女がいる。もう、10時にもなろうかというのに。

「どうしたの?家に帰らないの?」
「・・・」
「帰るところが無いの?」
(少女、うなずく)
「よかったら、お兄ちゃんのところにくるかい?」
(少女、ためらっている様子)
「いこっか」手を取る
「嫌!」
「そっか。お兄ちゃんの家はすぐそこだから、いつでもおいで。あそこの、看板出てる所」

果たして、ボクの行動は正しかったのであろうか。
クーラーの効きも悪く、ぬるい風をかき回すだけのこの部屋に、冷たい刺激がのどの心地良い。
買ってきたはいいが、読まずに放ってあった「論理哲学思考」をパラパラと捲る。
こうしてボクは、自分を知的上流階級であるかのように誤魔化すのだ。意味も判らない言葉に酔いしれて。

立て付けの悪い扉が風に叩かれる。ボクは、誰かが訪問してくれるコトを心の奥底で望んでいた。
誰もいないだろう・・・そう思いながらも、玄関を開く。そこには。
薄汚れた人形を抱いた少女が立ち尽くしていた。捨て猫のような、怯えた瞳を湛えながら。

「入りなよ」
「・・・」
「どうして泣いているんだい?」
少女は小刻みに震えながら、
「んっ・・・うぅ。また・・・おとうさんが・・・」
どうして、世の中というのはこうなのだろうか。何の罪もない、まだ幼い少女がいつもいつも犠牲になる。

「ボクも、ひとりぼっちさ。一緒だね」
少女に、微かな笑顔が戻った。

(と)