かみ合わない日常(永遠に暫定)

やってくるこの毎日が、人生だと知っていたら!

・・・・

さっきの続きを。

家に帰って、父に電話をした。
もう助からないという話を、言って聞かせた。
肝臓に水が貯まって、腹膜にもがんが広がって腹水を大量に産生していること、
近い将来、この病気で母が死に至るであろうということ、
それが1週間先か半年先か、はたまた1年か3年かは抗がん剤の効き次第ということ、
そしておそらく母は、長い入院生活の中で、自分が知り合った
「助からなかった人」のパターンに、自分が入りつつあるということを
肌で感じ取っているのであろうということを。

「おかあさん、おとうさんのことを冷たい冷たいって何度も言ってたよ」
しばらくの沈黙のあと、電話の向こうから怒鳴り声が聞こえた。
「私に怒鳴ってもいいけど、大事なのはおかあさんがどう思っているのかでしょ。
おかあさんのこと、もっと優しくしてあげなよ。
おかあさん、きっと寂しいんだよ。おとうさんにかまってほしいんだよ」
電話ですすり泣く声が聞こえた。

弟から電話。
「お前、はっきり言いすぎだよ。すっかり元気がなくなって今にも自殺しそうだ」
死ぬなら死ぬで、母が死んだあとにしてほしい。でないと母がまた文句を言うから。
「なあ、頼むから家に帰ってきてくれよ」
もうあの家には戻りたくない。
ソラナックス地獄にも、眠剤漬けにももう戻りたくない。

そんなことを思っていたら、彼から電話が。
「家族と過ごす時間が、人生で一番大事なのだから、
実家に戻って、仕事もお休みをもらって、家の事を手伝って助けてあげなよ」

そんなことできるわけないじゃないか!
転職したばかりの会社、今日が初出勤だというのに初日からまともに出勤せず、
しかもしばらく休みをもらって、あの家に帰って家事手伝いをしろというのか?

無理だよ。普通の家庭で育った人ならともかく。
精神的に辛すぎる・・・。
ACの私が、あの家に戻ることは到底できない。
唯一、大好きだった母だけが、こんなに早くこの世を去ることになるなんて。

今になって涙が出てきた。
私がしっかりしなくちゃ、その責任感が、今まで私の感情を押し殺していた。

これからどうなってしまうのだろう。母の物語の結末は・・・。
「生まれてきてよかった」と、せめて母の物語だけはそうであってほしい。
そのためには、私には何ができる?

ペコでした。