早起きして仕事。
雨の中。ひたすら、車を走らせる。
御前水の坂を下り始めた頃、電話が鳴る。
「今日ダメだわ。中止ね。中止。」
そのまま。ひたすらに、車を走らせる。
望郷の念が募る。
雨が強くなる。見慣れた風景。どこか荒涼として、無機質な。
雨合羽を着た小学生。黄色。赤い傘。
歩道橋を左へ曲がれば、海へと続くなだらかな坂。
どこかうらぶれた、寂寥感の漂う裏町。
母なる海が、海が。
今日は泣いている。僕を、迎えるように。
晩夏の海は、どこまでも優しく、吹きすさぶ風は、どこまでも厳しく。
波の音を、雨が掻き消す。
拒絶するように。次第に、激しく。
雨音に抱かれながら、僕は眠る。
ゆっくりと、深く。味わうように。
(と)