かみ合わない日常(永遠に暫定)

やってくるこの毎日が、人生だと知っていたら!

妄想ReMix「新築の家にて」

本日、休出。
とはいえ、9時出勤なんで気も楽。
ラティスフェンス、昨日の続きを。
束石がすでに(深さや通りが)決まっているので、後は柱の高さ調整とラティス入れと、細々した微調整と。
先の見える仕事だと、肩の力を抜いてできるのでいいですよ。

10時過ぎ、施主さんがやってくる。
腰の低いご主人(公務員風)と、奥さん(口うるさそう)と。
子供が2人。一姫二太郎で。
思わず、姿勢を糺してしまうほどの美少女。
ペコリと下げる頭に、私も思わず呼応する。
背中の真ん中ほどまである髪は、ゴムで縛っている。
やや冷たい印象を与える、目じりが上がり気味の切れ上がった瞳に、意志の強さを感じる。

私は、防水処理の下準備の為に、しゃがんで仕事をしていた。
右上方から視線を感じ、顔をあげると。
少女が、私の手元を覗き込んでいる。
彼女の放つ、その甘い芳香はまだ熟しきる前の果実に似た甘酸っぱさがある。
「ねえ、何やってるの?」
少し舌足らずな感じのしゃべり方も、私の心をくすぐる。
「これかい?柱の根元が腐らないようにね、隙間を埋めるんだよ」
「そっか・・・よくわかんないや」
そう云って、けらけらと笑う姿もまたかわいい。

一服休憩。コーヒーを啜りながら。
家の中をひとしきり見た少女が戻ってきて、私の傍に駆け寄ってくる。
「ねえねえ、お兄ちゃんってさ、(TOKIOの)城島くんに似てるよね?」
私、少し困惑。んなコト、初めて云われたぞ。
「…そ、そっかぁ?まあ、大工仕事の下手さ加減は似てるかもな」
「うふっ。あへへのへ〜」
優香の真似をしながら、パタパタと駆けていく。
私はだらしない笑みを浮かべながら、心の中で
「あへへ・・・」と呟く。

昼過ぎには完成して、いよいよ施主さんに引渡し。
「いやあ、大したもんだ」などと感心しているご主人。
丁重に感謝の言葉を述べられると、こっちのほうが恐縮する。
ていうか、大したもんなのは造作をした社長であって、私ではないんですけどね。
少女が、少しモジモジしながら私に囁く。
「あのさぁ・・・お家が完成したら、遊びにきてね」
「うん。わかったよ。約束する」
「絶対。絶対だからね。約束だよっ」
少女の力強い瞳に見つめられては、反故にすることなんて出来ないさ。

帰る私の車に、いつまでも手を振る少女。再会の時を楽しみにして。

(と)